2026年05月28日

走ること、移動すること

今年の大きなテーマのひとつは、走ることです。

正確に言えば、フルマラソンを走ること。
今年、初めてのフルマラソンに挑戦しようとしています。

なぜ走るのか。
健康のため、と言えば、もちろんそれもあります。
体力をつけたい。
少しでも長く動ける身体でいたい。
年齢を重ねるほど、そういうことは以前よりずっと切実になります。

でも、それだけではない気がしています。

走っていると、身体は前に進んでいるのに、頭の中は少し静かになります。
考えようとしているわけではないのに、考えが浮かんでくる。
まとまらなかったことが、ふと別の角度から見えてくる。
同じ道を走っているはずなのに、日によって景色の見え方が変わる。

走ることは、私にとって移動することです。

もちろん、実際に場所を移動しています。
家を出て、道を進み、橋を渡り、折り返し、また戻ってくる。
けれど、それ以上に、走ることで自分の内側の位置が少し変わるような感覚があります。

動き出す前の自分と、走り終えたあとの自分は、少しだけ違う。
大きな変化ではありません。
でも、たしかに何かが移動している。

息が上がる。
脚が重くなる。
風の向きが変わる。
今日は調子がいいと思う日もあれば、思ったより進まない日もある。
それでも一歩ずつ前へ出る。

走ることは、とても単純です。
でも、その単純さの中に、不思議な広がりがあります。

フルマラソンは42.195km。
数字で見ると、なかなか長い距離です。未知の距離です。
気合いだけではどうにもならないし、勢いだけでもたぶん最後までは行けない。
準備をして、距離に慣れて、身体の声を聞きながら、少しずつ近づいていくしかありません。

これは、仕事や会社を育てていくことにも少し似ている気がします。

いきなり遠くへは行けない。
でも、今日少し走ることはできる。
思い通りに進まない日もある。
でも、止まらなければ、少しずつ場所は変わっていく。

powderfulも、今まさにそういう時期にあります。

どこへ向かうのか、まだはっきりとは見えていません。
けれど、今までと同じ場所にとどまっている感じでもありません。
仕事のこと。
遊びのこと。
移動のこと。
ニセコのこと。
茨城での日々のこと。
人との出会い。
自分の中に残っている小さな違和感や、面白そうだと思う感覚。

そういうものを持ったまま、少しずつ移動している。

走りながら考える、ということがあります。

机の前で考えていると、どうしても頭だけで答えを出そうとしてしまいます。
でも、走っていると、身体が先に動いてくれる。
頭はその後ろから、少し遅れてついてくる。

その順番が、今の自分には合っているのかもしれません。

考えてから動くのではなく、動きながら考える。
決まってから始めるのではなく、始めながら形を探す。
正解を見つけてから進むのではなく、進みながら、自分にとっての方向を確かめていく。

まだ見ぬ場所へ、まだ見ぬかたちへ。

この言葉は、仕事のキャッチコピーとして考えたものですが、走ることにもそのまま重なります。

まだ見ぬ場所とは、遠くの土地だけではありません。
まだ経験したことのない距離。
まだ見たことのない自分の状態。
まだ知らない景色。
そして、まだ言葉になっていない考え。

走ることで、そこへ少しずつ近づいていく。

速く走りたいわけではありません。
もちろん、少しは速くなれたらうれしい。
でも今はそれ以上に、最後まで進むこと。
自分の足で、長い距離を移動しきること。
その途中で何を感じるのかを、ちゃんと見てみたいと思っています。

フルマラソンを走ったからといって、何かが劇的に変わるわけではないかもしれません。

でも、42.195kmを自分の足で移動したあとに見る世界は、たぶん今とは少し違うはずです。
同じ場所に戻ってきたとしても、そこに立っている自分が少し違う。

それを確かめてみたい。

走ることは、身体の移動です。
そして同時に、考え方の移動でもあります。

powderfulをこれからどう育てていくのか。
自分はどんな仕事をしていきたいのか。
誰と、どこで、何を作っていきたいのか。

その答えは、机の上だけでは見つからない気がしています。

だから今年は、走ります。

少しずつ距離を伸ばしながら。
息を切らしてハーハーしながら。
ときどき不安になりながら。
でも、まだ見ぬ場所へ向かって。

走ること。
移動すること。
考えること。

その全部が、今のpowderfulにつながっている気がしています。

2026年8月、北海道マラソンに挑戦します。

powderful合同会社
舘野光洋