
まだ名前のない仕事について
powderfulの仕事を、ひとことで説明するのは少し難しい。言語化することが大事と言われているこの時代なのに。
デザインの仕事です、と言えばたしかにそうです。
企画の仕事です、と言っても間違ってはいません。
言葉を整えたり、見え方を考えたり、事業や活動の伝わり方を一緒に考えたりもします。
でも、それだけでは少し足りない気がしています。
長くお付き合いのある方々は、powderfulがどんなことをしているのか、なんとなくわかってくださっています。
「こういうことを相談したい」と声をかけていただき、その都度、話を聞きながら、必要なかたちを一緒に探してきました。
一方で、初めてお会いする方に「どんな仕事をされているんですか?」と聞かれると、少し困ることがあります。
グラフィックデザインです。
Web制作です。
ブランディングです。
商品企画です。
そう答えることもできます。
でも、どの言葉も少しだけ狭い。
どれかひとつに収めようとすると、実際にやっていることから、少しずれてしまう気がするのです。
たとえば、最初の相談は「案内を作りたい」という話だったとしても、よく聞いていくと、本当に必要なのは案内そのものではなく、事業の考え方を整理することだったりします。
「新しい商品を見せたい」という話の奥に、誰に届けたいのか、どう受け取ってほしいのか、どんな印象を残したいのか、まだ言葉になっていないものがあることもあります。
こちらが何かを作る前に、まず一緒に話をしながら、考えをほどいていく。
何を大切にしているのかを見つける。
どこへ向かいたいのかを確認する。
そのうえで、言葉や見え方や構成を整えていく。
そういう時間も含めて、powderfulの仕事なのだと思います。
仕事の価格についても、少し説明しにくいところがあります。
以前、ある方から「舘野さんの仕事の価格って、グレーですよね」と言われたことがあります。
長くお付き合いのある方だったので、もちろん悪い意味ではありません。
むしろ、とても正直な言葉だと思いました。
決まったものを、決まった仕様で、決まった数だけ作る。
そういう仕事であれば、価格は比較的はっきりさせやすいのだと思います。
けれど、powderfulの仕事は、最初から完成形が見えているものばかりではありません。
話を聞きながら、考えを整理し、方向を見つけ、必要なかたちを探していく。
その過程の中で、言葉が生まれたり、見え方が決まったり、ときには当初とは違うものが必要だとわかったりします。
価格がグレーなのではなく、仕事そのものが、まだ白黒に分かれる前の場所から始まることが多いのかもしれません。
もちろん、曖昧なままでよいという意味ではありません。
お金をいただく以上、目的や範囲や進め方は、できるだけ正直に確認しながら進めたいと思っています。
ただ、最初からすべてを細かく決めすぎると、見つけられなくなるものもあります。
相談しながら変わっていく余地。
話しているうちに見えてくる本当の課題。
その人や事業に合った、まだ名前のないかたち。
そういう余白も含めて、powderfulの仕事なのだと思います。
今は、仕事の名前そのものが変わっていく時代です。
デザイン、企画、編集、発信、商品づくり、記録、体験。
それぞれの境目が、以前よりも少しずつ曖昧になってきました。
AIの登場によって、作ることの意味も変わりはじめています。
きれいに作ること、早く作ることだけなら、これからますます道具が助けてくれるようになるでしょう。
だからこそ、人や会社や場所の奥にあるものを見つめること。
まだ言葉になっていない思いを聞くこと。
その人らしいかたち、その場所らしい伝わり方を探すこと。
そういう、すぐには名前をつけにくい仕事が、これからますます大切になるのではないかと思っています。
powderfulがやっているのは、たぶん、まだ名前のない仕事です。
まだ名前がないから、説明しにくい。
でも、まだ名前がないからこそ、自由に動ける。
決まったメニューを並べるよりも、まず話を聞くこと。
正解を急ぐよりも、一緒に考えること。
今ある言葉に無理に当てはめるよりも、その人や、その場所に合ったかたちを探すこと。
まだ名前のない仕事を、これからも少しずつ続けていきます。
powderful合同会社
舘野光洋
